2014年7月12日土曜日

長距離トラック運転手


登場人物


フランク 45 フェデックス社・トラック

運転手

ジェーン 5  フランクの娘

ジョージ 50 フランクの上司

ブラウン 30 ガソリンスタンド店員

メアリー 72 主婦

トム   80 メアリーの夫、無職

ラルフ  50 空港キャフェ店長

スティーブ40 救急センター職員

 

○フランク自宅・居間・朝

フランク、出勤の準備をしながらテレ ビのニュース番組を見ている。ジェーンもテレビを見ている。

アフリカの多数の子供が病院のベッドに横たわっている画像。

テレビのアナウンサー「アフリカでマラリアが大流行しています。昨年のアフリカ全土の死者の数は65万6千人でしたが、5歳以下の子供は毎分1人の割合で死亡しています。現地では診断キット、抗マラリア薬、ワクチンが不足しており……」

ジェーン「マラリアって、何?」

フランク「うん、怖い病気だよ」

 

フェデックス貨物輸送会社・トラック輸送部門・事務所・雨

   フランクとジョージが事務机を挟んで話している。

ジョージ「じゃ、フランク、よろしく頼むよ。今から出発すれば、空港には、そうだな遅くても五時半には着くだろう」

フランク「搬入ゲートが締まるのは、確か……」

ジョージ「六時だ。六時きっかりに締まるよ」

フランク「分かりました」

ジョージ「スミスクライン社は上得意だ。必ず六時には間に合わせてくれよ」」

フランク「心配ご無用です」

ジョージ「それから、運転、注意しろよ、雨だから」

   ジョージはトラックの運転席に乗り込む。運転席の時計が四時丁度を示している。

トラックの荷台には(ズームアップ)「グラクソ・スミスクライン製薬会社」と書いたダンボール箱が山積みになっている。ダンボールに貼ってあるラベルには「抗マラリア薬」と書いてある。

 

○道路・大雨

   フランクが運転するトラックが走っている。

車はほとんど走っていない。カーラジオからは野球中継の放送が聞こえる。黙々とフランクは運転。

高速道路に入る。

   

○高速道路・大雨

   フランクのトラックがガソリンスタンドに入り、停車する。

スタンド従業員がガソリンを入れる。

フランクは休憩所に入り、コーヒーを飲みながら休憩。

テレビは野球中継。

店員「大ぶりになってきましたね。お客さん,どちらまでですか」

フランク「ああ、ダーラム空港までね」

店員「じゃあ、あと四、五十分ですね」

フランク「そうね」

店員「雨だから、大変ですね」

フランク「いや、商売だから、別にどうってことないよ。雨でノロノロ運転だがね」

店員「こんな日は、誰も、慎重になりますよ」

フランク「そうだね。じゃ」

   フランク、代金を払い休憩所をでる。

 

○高速道路・大雨・強風

   フランク、相変わらす野球中継を聞きながら黙々と運転。

今、トラックは、道路の片側が小高い丘になっているところを走っている。運転席の時計は五時二十分を示している。

フランク(独り言)「案外遅れちまったな。ま、あと十分ぐらいだから、六時には充分間に合うが」

突然右側の丘から大きな岩が転がってきて、前方を走っていた乗用車に当たる。乗用車は中央分離帯に激突し、一回転して止まる。

フランクは急停車し大雨の中を駆けつける。

乗用車の前部が大破しており、老夫婦が閉じ込められている。

顔や額から血を流してぐったり。

夫の方は意識がなく、妻の方が目を半分開けて、フランクを見て口をパクパクしている。「助けて」と言っている唇の動き。

フランクは、ドアを開けようとしたが開かない。

フランク(独り言)「どうしよう。六時までに届けないと……」

 

回想

○フランク自宅・居間・朝

アナウンサー「五歳以下の子供は毎分1人の割合で死亡しています。現地では抗マラリア薬、ワクチンが不足しており……」

ジェーン「マラリアって、何のこと?」 

 

○高速道路・道端・大破した車の前・大雨

フランク(独り言)「見殺しにするか……子供達を救うか……」

   突然、フランクはトラックに駆け戻る。道具箱からスパナを持ってきて、乗用車のガラスを破る。

手を入れて内側からロックを開けようとしても開かない。

窓枠に残ったガラスを取り除き、老女を引きずり出す。

次に老人を引きずり出そうとしても、老人は動かない。

フランクはフロントガラスを割って救出。

二人を順に運転席の隣に担いで運び込む。

運転席の時計が五時五十分を示している。

フランク、トラックに乗り、全速で空港に向かいながら携帯電話で救急センターに電話する

フランク「こちら、フェデックス社のトラック。ダーラム空港に入る高速道路85号線を走っています。事故にあった老人を乗せて、空港に向かってます。あと十分ぐらいで空港に着きます。救急車をお願いします」

救急センター職員「了解しました。お名前をどうぞ。トラックを空港正面玄関につけて下さい」

フランク「分かりました。名前はフランク・ハワードです」

運転席の時計が六時を示している。

 

○空港正面玄関・

   救急車が待機している。

フランクのトラックが救急車の後ろに停車。

フランク、トラックから降りる。

救急隊員がストレッチャーをトラックに付け、老夫妻を救急車に搬入し、救急車はサイレンを鳴らして走り去る。

フランク、トラックに戻る。

運転席の時計が六時二十分分を示している。

 

○空港駐車場

   フランクはトラックを止め、降りる。

 

○空港キャフェ

フランク、キャフェに入る。コーヒーを注文して飲む。

テレビのアナウンサーが大雨の被害を報告している。川の増水や土砂崩れの映像。

被害報告が終わると続けて、

アナウンサー「ここまで、大雨の被害状況でした。ところで、今日から夏時間になり、時計を一時間早めましたが、例年のように、一部混乱があったようです。街の様子を取材しましたので」

   フランクは自分の時計を見る。六時四十分を示している。キャフェの時計を見ると、同じく六時四十分。

フランクはカウンター越しに店長に訊く。

フランク「あの時計、夏時間になってますか」

店長「あっ、すみません。うっかりして直してませんでした。今直します。えっと、一時間前にするのだから、今、五時四十三分か」

   フランクは急に立ち上がり勘定を払い、一目散に走り出す。

 

○空港駐車場

   フランク、トラックに乗り込む。トラック急発進する。

 

○空港搬入口

   フランクのトラックが搬入口から中に入っていく。入り終わると搬入口のシャッター扉が徐々に降りてくる。

 

○搬入口内

フランクはヘッドライトをつけ、トラックを前進させながら運転席の時計を見る、時計は七時を示している。

 
                             おわり
 
あとがき
改良点は
「夏時間」は間違いで「冬時間」に変える
最後の「搬入口内」はカット
けが人を車から救出することはありえない。高速道路に設置してある電話で救急を呼ぶはず。
川に車が落ちたのを助ける方が現実的か