登場人物
フランク 45 フェデックス社・トラック
運転手
ジェーン 5 フランクの娘
ジョージ 50 フランクの上司
ブラウン 30 ガソリンスタンド店員
メアリー 72 主婦
トム 80 メアリーの夫、無職
ラルフ 50 空港キャフェ店長
スティーブ40 救急センター職員
○フランク自宅・居間・朝
フランク、出勤の準備をしながらテレ ビのニュース番組を見ている。ジェーンもテレビを見ている。
アフリカの多数の子供が病院のベッドに横たわっている画像。
テレビのアナウンサー「アフリカでマラリアが大流行しています。昨年のアフリカ全土の死者の数は65万6千人でしたが、5歳以下の子供は毎分1人の割合で死亡しています。現地では診断キット、抗マラリア薬、ワクチンが不足しており……」
ジェーン「マラリアって、何?」
フランク「うん、怖い病気だよ」
○フェデックス貨物輸送会社・トラック輸送部門・事務所・雨
フランクとジョージが事務机を挟んで話している。
ジョージ「じゃ、フランク、よろしく頼むよ。今から出発すれば、空港には、そうだな遅くても五時半には着くだろう」
フランク「搬入ゲートが締まるのは、確か……」
ジョージ「六時だ。六時きっかりに締まるよ」
フランク「分かりました」
ジョージ「スミスクライン社は上得意だ。必ず六時には間に合わせてくれよ」」
フランク「心配ご無用です」
ジョージ「それから、運転、注意しろよ、雨だから」
ジョージはトラックの運転席に乗り込む。運転席の時計が四時丁度を示している。
トラックの荷台には(ズームアップ)「グラクソ・スミスクライン製薬会社」と書いたダンボール箱が山積みになっている。ダンボールに貼ってあるラベルには「抗マラリア薬」と書いてある。
○道路・大雨
フランクが運転するトラックが走っている。
車はほとんど走っていない。カーラジオからは野球中継の放送が聞こえる。黙々とフランクは運転。
高速道路に入る。
○高速道路・大雨
フランクのトラックがガソリンスタンドに入り、停車する。
スタンド従業員がガソリンを入れる。
フランクは休憩所に入り、コーヒーを飲みながら休憩。
テレビは野球中継。
店員「大ぶりになってきましたね。お客さん,どちらまでですか」
フランク「ああ、ダーラム空港までね」
店員「じゃあ、あと四、五十分ですね」
フランク「そうね」
店員「雨だから、大変ですね」
フランク「いや、商売だから、別にどうってことないよ。雨でノロノロ運転だがね」
店員「こんな日は、誰も、慎重になりますよ」
フランク「そうだね。じゃ」
フランク、代金を払い休憩所をでる。
○高速道路・大雨・強風
フランク、相変わらす野球中継を聞きながら黙々と運転。
今、トラックは、道路の片側が小高い丘になっているところを走っている。運転席の時計は五時二十分を示している。
フランク(独り言)「案外遅れちまったな。ま、あと十分ぐらいだから、六時には充分間に合うが」
突然右側の丘から大きな岩が転がってきて、前方を走っていた乗用車に当たる。乗用車は中央分離帯に激突し、一回転して止まる。
フランクは急停車し大雨の中を駆けつける。
乗用車の前部が大破しており、老夫婦が閉じ込められている。
顔や額から血を流してぐったり。
夫の方は意識がなく、妻の方が目を半分開けて、フランクを見て口をパクパクしている。「助けて」と言っている唇の動き。
フランクは、ドアを開けようとしたが開かない。
フランク(独り言)「どうしよう。六時までに届けないと……」
回想
○フランク自宅・居間・朝
アナウンサー「五歳以下の子供は毎分1人の割合で死亡しています。現地では抗マラリア薬、ワクチンが不足しており……」
ジェーン「マラリアって、何のこと?」
○高速道路・道端・大破した車の前・大雨
フランク(独り言)「見殺しにするか……子供達を救うか……」
突然、フランクはトラックに駆け戻る。道具箱からスパナを持ってきて、乗用車のガラスを破る。
手を入れて内側からロックを開けようとしても開かない。
窓枠に残ったガラスを取り除き、老女を引きずり出す。
次に老人を引きずり出そうとしても、老人は動かない。
フランクはフロントガラスを割って救出。
二人を順に運転席の隣に担いで運び込む。
運転席の時計が五時五十分を示している。
フランク、トラックに乗り、全速で空港に向かいながら携帯電話で救急センターに電話する
フランク「こちら、フェデックス社のトラック。ダーラム空港に入る高速道路85号線を走っています。事故にあった老人を乗せて、空港に向かってます。あと十分ぐらいで空港に着きます。救急車をお願いします」
救急センター職員「了解しました。お名前をどうぞ。トラックを空港正面玄関につけて下さい」
フランク「分かりました。名前はフランク・ハワードです」
運転席の時計が六時を示している。
○空港正面玄関・
救急車が待機している。
フランクのトラックが救急車の後ろに停車。
フランク、トラックから降りる。
救急隊員がストレッチャーをトラックに付け、老夫妻を救急車に搬入し、救急車はサイレンを鳴らして走り去る。
フランク、トラックに戻る。
運転席の時計が六時二十分分を示している。
○空港駐車場
フランクはトラックを止め、降りる。
○空港キャフェ
フランク、キャフェに入る。コーヒーを注文して飲む。
テレビのアナウンサーが大雨の被害を報告している。川の増水や土砂崩れの映像。
被害報告が終わると続けて、
アナウンサー「ここまで、大雨の被害状況でした。ところで、今日から夏時間になり、時計を一時間早めましたが、例年のように、一部混乱があったようです。街の様子を取材しましたので」
フランクは自分の時計を見る。六時四十分を示している。キャフェの時計を見ると、同じく六時四十分。
フランクはカウンター越しに店長に訊く。
フランク「あの時計、夏時間になってますか」
店長「あっ、すみません。うっかりして直してませんでした。今直します。えっと、一時間前にするのだから、今、五時四十三分か」
フランクは急に立ち上がり勘定を払い、一目散に走り出す。
○空港駐車場
フランク、トラックに乗り込む。トラック急発進する。
○空港搬入口
フランクのトラックが搬入口から中に入っていく。入り終わると搬入口のシャッター扉が徐々に降りてくる。
○搬入口内
フランクはヘッドライトをつけ、トラックを前進させながら運転席の時計を見る、時計は七時を示している。
おわり
あとがき
改良点は
「夏時間」は間違いで「冬時間」に変える
最後の「搬入口内」はカット
けが人を車から救出することはありえない。高速道路に設置してある電話で救急を呼ぶはず。
川に車が落ちたのを助ける方が現実的か