2015年7月25日土曜日

転落 テレビドラマ

                   

田辺優斗 15 北山中学校3年生

杉野航一 15 杉野の同級生(中3)

宮部真治 55 田辺の担任(国語担当)

杉野綾子 41 杉野の母

星野亮二 50 同校教師(世界史)

松田竜司 43 同校教師(英語)

生徒達

 

○北山中学校・職員室前・廊下

   実力考査成績優秀者名(十名)が掲示されている。一位は田辺優斗(アップ)

生徒A「また田辺がトップだ」

生徒B「あいつ、中一から三年間ずっとトップだ」

生徒C「家で猛勉強してるんだろ」

生徒B「頭が違うんだ」

生徒A「そう、頭だよ」

   女子生徒達が掲示を見る

女子生徒1「きゃー、田辺さんよ。また」

女子生徒2「すごーい」

生徒A「なんでぇ、勉強できりゃ、すごいんか」

女子生徒1「あんたとは大違いよ」

女子生徒2「イケメンだし」

女子生徒3「背が高いし」

 

○教室

星野が世界史の授業をしている。

星野「カエサルは『賽は投げられた』と言ってルビコン川を渡った。ルビコン川を渡るとはどういうことか。分かる人? いないのか」

   田辺、手を挙げ、指名されて、

田辺「いかなる将軍も軍隊を連れて渡ることは禁じられていました。ローマに対する反乱とみなされたからです」

星野「そう、その通り、さすが田辺だな」

 

○職員室

   昼休み、星野と松田が話している。

星野「田辺はたいしたもんだよ。こちらが説明しようとすること全部知ってるんだ」

松田「田辺ですか。昨日の英語の授業で私、立往生しましてね」

星野「えっ?」

松田「田辺、ダブリュコーテーションマークについて質問しましてね。答えられなかったんですよ」

星野「そうですか、他人ごとじゃないですな」

   

○校舎正面

   時計、午前8時。生徒登校風景

 

○学校・応接室

   杉野と綾子が宮部と話をしている。

宮部「一、二週間もすれば友達もできますよ。ただ、勉強は頑張ってもらわないと」

綾子「はあ、田舎の学校やったから」

宮部「養老の中学とこの学校では、進路が違いますから追いつくのは大変かもしれませ

んがね。(航一に)分からないことがあったら先生なりクラスメートに聞けばいいよ」

航一「はい」

   始業のチャイムが鳴る。

   宮部、立ち上がる。杉野と綾子も立つ。

綾子「よろしくお願いします」

  

○教室

   宮部が教室に入る。後ろから杉野。

田辺「起立! 礼!」

   生徒は起立して礼をする。

宮部「諸君、今日からこの学校に転校してきた杉野航一君だ、みんな仲良くしてやってくれたまえ」

宮部、黒板に「杉野航一」と書く。

宮部「じゃ、一言」

杉野「岐阜県の養老から転校してきました杉野航一です。よろしくお願いします」

宮部「座席は、あの机ね」

杉野「はい」

   杉野は机に座る。すぐ隣が田辺

 

○教室・昼休み

   ST 三週間後

   田辺が杉野に数学を教えている。

田辺「これは二次方程式の問題でね。縦の長さは142Xで表せるね。それで……」

 

○教室

   生徒は試験問題に取り組んでいる

   教室の掲示板に「中間考査時間割(十月二十日~二十四日)」掲示。

   チャイムが鳴る

宮部「止め。後ろから答案を集めて」

   最後列の生徒、答案を集める。

 

○職員室前・廊下

   定期考査成績優秀者名(十名)の掲示。

   トップは田辺(アップ)

 

○学校・教室・放課後

田辺と杉野が話している。

田辺「どうだった? 中間考査?」

杉野「いや、あまり良くないよ」

田辺「何番?」

杉野「八十七番」

田辺「そうか、真ん中以上だ。田舎から転校してきて、その成績ならいいよ」

杉野「田辺のおかげだよ」

田辺「いや、お前が頑張ったからだよ」

 

○学校・階段・放課後

   杉野が階段を踏み外し階段を転落。

 

○学校正面玄関

   救急車に杉野が搬入される。

 

○病院

   杉田がベッドに寝て、足にギブスをつけ天井からつっている。傍らに田辺。

杉野「すまんなぁ、いつも」

田辺「これが今日の授業で、これがプリント」

   田辺はノートとプリントを渡す。

杉野「英語、分からんとこあるんだけど」

田辺「どこ?」

杉野「この英文、どういう意味?」

 

○学校・教室

   星野が世界史のプリントを配る。

田辺「先生、もう一枚ください。杉野の」

星野「あ、そうか」

 

○杉野家・航一の部屋

   ST 一か月後

   松葉づえが壁に立てかけてある。

航一が椅子に座って田辺と話している。

田辺「黒板中にチャボ、チャボて書いてあったんだ。それでさ、チャボ先生、かんかんに怒ってね、誰だ!落書きしたのってね」

杉野「面白い!」

田辺「で、チャボね、怒って今日は授業しないって言って帰っちゃったよ」

杉野「で、授業なし?」

田辺「いや、西村と柳が謝りに行ってね」

綾子、紅茶を持って部屋に入ってくる。

綾子「いつもすみませんね。来週から学校に行ってもいいんですって、でも、杖ついてよ」

田辺「そうですか」

杉野「来年一月中ごろまで杖がいるって」

田辺「そうか、あ、今日のプリント」

杉野「ありがと」

 

○職員室

   宮部と星野が話している。

宮部「田辺って勉強もできるが、人間もできてるよ」

星野「ああ、杉野の面倒よく見てるってね」

 

○教室

   生徒、試験問題に取り組んでいる。

黒板右下に十二月八日の日付と日直名。

   掲示板に「二学期期末考査時間割表」

 

○教室

   宮部、順に生徒に通知表を渡している。

宮部「次、杉野」

   杖をついた杉野は通知表をもらって中をのぞく。田辺が杉野に近づいて、

田辺「何番?」

   杉野、通知表を見せる。七十七番(アップ).

杉野「田辺、一番?」

田辺「勿論」

 

○学校・正面玄関

   杉野が車から松葉杖をついて降りる。田辺が待っている。

綾子「すみませんね、田辺さん」

田辺「いいえ。(杉野に)じゃ、行こうか」

 

○教室

   ST 翌年一月十二日

   生徒は試験に取り組んでいる。

掲示板に「実力考査時間割」

 

○職員室前・廊下

「実力考査成績優秀者名」掲示。

一位は杉野、二位が田辺(アップ)

生徒達、掲示を見ている

生徒1「田辺、二位?」

生徒2「杉野って、転校してきた奴か」

生徒3「そう、あいつ、田辺よりできるんか」生徒1「田辺、いいざまだ」

女子生徒1「杉野って誰?」

女子生徒2「田辺君といつも一緒にいる子よ」

 

○校舎・階段・放課後

   杉野が松葉杖をついて、階段を降りようとしている。付近に誰もいない。

   田辺、杉野の後ろにそっと近寄り、背中を押す。杉野、階段を転げ落ちる。

 

○学校正面玄関

   杉野が救急車に搬入され、サイレンを鳴らして消えていく。見送る先生、生徒、田辺。

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